音楽のジャンルに関わらず、コンサートでの演奏プログラムを終えたあとに必ず用意されているのが、アンコールです。
アンコールとは、本来の意味は「もう一度聴きたい」という観客の掛け声や拍手に応えて行う演奏のことですが、いつの間にか演奏者も観客もアンコールの存在が当たり前のようにプログラムが組まれるコンサートが多く見られるようになっています。
こうした予定調和のアンコールについて今まで何の疑問も感じていなかったのですが、とあるコンサートで演奏終了後に拍手がまばらだったにも関わらず予定されていたすべてのアンコール曲を強行したことで、アンコールのあり方に疑問を持つようになりました。
こういったアンコールのあり方に対してぽつりとTwitterでつぶやいてみたところ、疑問を持っているのはくらげだけでないことがわかりました。
あたり前に、行う前提のアンコールに疑問を感じてる一人です。
— yohsu-K TAKASHIMA (@yo_chan_de) 2017年12月4日
そこで、アンコールは何のためにあるのかというものについて、改めて考えてみたいと思います。
アンコールとは
アンコールは、フランス語で「もっと」や「もう一度」という意味です。演奏者や歌手が予定のとおり終了し退場したあと、聴衆が拍手や掛け声で再演を望むことや、それにこたえて行う演奏や歌のことを指します。
つまり、本来ならプラグラムに組まれた演奏が終了し演奏者が舞台から退場した後にプログラムの演奏だけでは物足りない、もしくは素晴らしい演奏だったのでもう一度聴かせてほしいと観客がお願いをするためのものです。ですので、あらかじめアンコールのための演奏曲は用意されておらず、プログラム中に演奏された曲を演奏することになります。
現在のアンコールの現状
ところが、ほとんどのコンサートではアンコールはあらかじめあるものと想定して数曲用意されており、リハーサルでもアンコールを含めて演奏が行われます。アンコールの曲数は、2曲から3曲程度です。
本番では、プラグラム上の演奏曲がすべて演奏されたあと演奏者やアーティスト、もしくは指揮者やソリストは一度退場しますが、舞台袖ではすでに再登場する準備がされています。舞台や照明も、予定通りの演奏後は客席は明るくせず、演奏者が再登場するのを待ちます。
観客の拍手に応えて何度か演奏者や指揮者が入退場を繰り返した後、予定通りにアンコール曲が演奏されます。この間、オーケストラや吹奏楽団など演奏者の人数が多い場合は舞台上で着席したまま待機しています。
予定通りにアンコール曲が演奏された後、もう一度演奏者が拍手の中で入退場を繰り返し、ようやく観客の拍手が収まりかけたところで客席が明るくなり、終演となります。
中には、アンコール曲は毎回決まった曲を演奏するのが定番となっていたり、アンコールでメンバー紹介や花束贈呈が行われたり、用意していた衣装に着替えてパフォーマンを行ったり、中学・高校吹奏楽部や合唱部などは3年生の送り出しなどの演出が含まれることもあります。
演奏プログラムは2部構成がほとんどなので、実質はこのアンコールが第3部だったりするのです。
もう一度アンコールについて考えてみる
「これで最後の曲です」と言っておきながら、最後の曲を演奏後に退場してアンコールの準備をする。観客もアンコールがあるとわかっているから出てくるまで拍手をして待っている。
「アンコールありがとうございます」と予定通りにアンコールを行う。そんな予定調和の雰囲気がしらじらしく感じることがあります。
また、コンサートの中には拍手が鳴り止みそうなのに再登場して演奏したり、アンコールだけで50分近くも延々と演奏したりと、演奏者が観客にアンコールを要求する、もしくは観客が演奏者にアンコールを要求する空気を感じることがあるのも事実です。
素晴らしい演奏を聴き終えたあとで惜しみない拍手を演奏者に送り、演奏者は鳴り止まない拍手に応え感謝の気持ちを込めてアンコール演奏を行う。それは演奏者にとって最高の喜びであり、観客にとってもまた演奏を聴くことができる幸せな束の間。アンコールとはそういうものではないかと思うのです。
そんな状態になるのだったらあらかじめアンコール部分を第3部として構成する、客席の状況を見て潔くアンコール演奏を行わないという選択をしてもいいのではないでしょうか。何よりも、アンコール演奏に余力を残すのではなくプログラム上の最後の演奏曲で力を使い切った演奏をしてほしいなと思うのです。
あって当たり前になってしまっているアンコールというものを、もう一度きちんと考えてみませんか?