※この記事は、noteに掲載していた記事をリライトしたものです。
2020年3月以降、新型コロナウイルス感染症の影響により、エンターテインメント業界では多くのイベントや公演が自粛・中止に追い込まれました。
緊急事態宣言が明けた際、多くのスタッフや出演者が以前のような活気ある現場に戻ることを願っていましたが、同時に「本当に以前と同じ状態に戻るだけでいいのか」という重要な問いも投げかけられています。
進化するテクノロジーと増え続ける負担
舞台や映像業界では、早朝から深夜まで働くことが当たり前という風潮が根強く残っています。
近年の急速なテクノロジーの進化により表現の幅は格段に広がりましたが、それに伴いシステムは煩雑化しました。劇場外でのプログラミング作業など、現場以外の作業時間も確保しなければならず、技術の進化は作業を楽にするどころか、かえってスタッフの作業量を増加させているのが現状です。
犠牲にされる日常生活の現実
限られた時間と予算の中で妥協なく作り上げられる作品は、非常にクオリティが高く素晴らしいものです。しかし、その一方で制作に関わる人々の日常生活が犠牲になっています。
具体的な影響として、以下のような深刻な状況が挙げられます。
* 生活環境の悪化:深夜に帰宅する生活では、掃除や洗濯をする時間がなく、部屋にはゴミが溜まり、ただ寝るためだけに帰宅する状態に陥ります。
* 食生活の乱れ:現場ではまともな食事の時間が取れず、開場直前に冷えたお弁当を急いでかき込むことも珍しくありません。
* 健康と労働環境:睡眠不足や不規則な生活による体調不良に加え、徹夜や残業に対して適切な手当が支払われないケースも依然として存在します。
このような過酷な環境が続くことで、希望を持って業界に入ってきた若手スタッフが3年も経たずに離職してしまい、業界を支える中間層が不足するという構造的な問題を引き起こしています。
#### 変化を拒む常識への疑問
フリーランスとして働く人々も、収入の不安定さや災害時のリスクなど、社員とは別の苦しさを抱えています。「俺たちの若い頃はもっと厳しかった」という過去の価値観や、自分たちが作り上げた常識を押し付ける風潮は、今の時代には合いません。
舞台の仕事が好きであっても、健康的で文化的な最低限の生活すら送れない環境では、舞台そのものを嫌いになってしまう可能性があります。
これからの舞台業界に向けて
私たちは、誰かの日常生活を犠牲にして成り立つ芸術のあり方を見直すべき時期に来ています。一人ひとりの負担を減らすためには、人件費の確保などコスト面での課題も多く存在します。
しかし、このような状況だからこそ、現場のスタッフだけでなく、クライアントや業界全体が手を取り合い、持続可能な働き方へと方向転換していくことが不可欠ではないでしょうか。

