舞台照明設備のLED化には、こんなデメリットも知っておいてほしい

ここ数年で徐々に増えつつあるLED照明。
舞台照明でも徐々に開発が進んでおりましたが、2011年の震災で原発事故による省エネの風潮が広まったことにより、舞台照明機材だけでなく客電・反響板などの部分でも一気にLED化の速度が速まりました。

このLED照明についての講習を受講し、デメリットの点が気になったので、取り上げることにしました。

まずはメリット

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  • 省電力・長寿命であること。
  • 発光効率は、ハロゲン電球の5倍。5年で元が取れる。

こういったところから、最近ではこぞって施設管理者がLED化を始めています。
多目的ホール時代、通路や階段などで使用していたタングステン電球は1ヶ月で一箱30個分を消費していましたが、LEDに変えてから一気に変える手間が省けました。

共有部分などは、しょっちゅう変えるのも大変なので交換したほうがじゅうぶんメリットがあります。

そしてデメリット

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メリットは、あくまでも一共用部の照明として使用するならです。
舞台照明などの演出照明に至っては各社こぞって開発をしていますが、2014年現在の今の段階ではあまりメリットを感じませんでした。

  • 演色性が悪い。
    カラーフィルターで色を変えているわけではないので、しかたない。
  • 明るさの限界が1kw程度。
    これが現在の明るさの限界だそうです。
  • 5年で劣化。
    長寿命とはいえ、5年も使うと7割近く明るさが落ちます。100%のまま長寿命ではないのです。
  • ノイズが発生する。
    最悪、音響と干渉することもありえます。収録、クラシックコンサートなどでは注意が必要です。
  • 素子自体は発熱する。
    全く熱が出ないわけではありません。素子が発熱するため、基板が熱くなります。
  • 素子は熱に弱い。
    一番問題なのは、素子自体が発熱し熱に弱いという点です。

熱に弱いということ

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ホールや劇場というのは、非常に熱がこもりやすい構造です。夏は、冷房が入らなければ非常に蒸し暑い状態です。

リハーサルや本番で舞台照明を使用している時間帯は、天井裏は灼熱地獄です。冷房が効いていたとしても、あまり上の方は関係ありません。
さらに、夏よりもひどいのが冬です。暖房の熱と舞台上の照明機材から発する熱が上昇するため、照明設備のある天井付近は軽く40度近くは行きます。

これが全LED化されれば、そこまでひどくはならないでしょう。ただし、シーリングライトスポットは機材の数が20台近くあるため、シーリングスポット室は長時間使用しているとかなりの温度は上がることが予想されます。
そうすると、LED素子が劣化し点灯しない機材が出てきます。しかし、ハロゲン電球のようにそう簡単には交換ができません。自力で交換できなければ機材を修理に出すことになり、その間使える機材が限られるということもあり得るわけです。

客電、反響板に関しても同じく熱で素子が壊れることは十分にありえます。特に、反響板に関しては構造上熱が逃げにくいため、劣化が早まることも考えられます。
対策としてシーリングに冷房を設置することになり、けっきょく節電どころか機材の修理代や冷房代が今まで以上にかかるという結果にもなりかねません。

客電・反響板ライトも演出照明であるということ

上記で取り上げたデメリットとは話が異なりますが、とあるホールであった事例を紹介します。
あるホールで改修が行われた結果、客席の扉前の客席照明がLED化されました。

しかし、問題はその工事がごく普通の電気屋さんによる施工であったという点です。そのため、煌々と眩しい白色LED電球が設置され、点灯消灯は調光卓の手元に引き込まれた露出型コンセントボックスによるスイッチ操作です。
そのため、全体的な客電を消灯する前に客席扉の客席照明を消灯してから客電を落とすという操作が必要になってしまいました。

舞台は、客電の消灯点灯も演出の一部です。ベルが鳴ったあと、ゆっくり消えていって本番が始まります。また、本番が終わってゆっくりと明かりが点いてから、客席にいた観客は立ち上がって帰っていきます。
反響板ライトも同じです。ゆっくりと点灯し、ゆっくりと消灯するという操作を行います。

舞台照明メーカーはその点を理解しているので、いかにきれいな調光ができるか、ノイズの削減などを考慮した製品を日々苦心しながら開発しています。
しかし、そういった意味を知らないホール・劇場運営者が、省エネ・低コスト目的で一般的に普及しているLED照明に改修した場合は、上記のような事例が起きてしまうのです。

結論

施設管理者は、省電力・長寿命という言葉に踊らされず、デメリットも含めて検討してください。
改修費用だけでなく、修理・買い替えを含めた予算の計上も必要になります。

机上論ではなく、実際に日々使用している者に聞くのが検討する上で一番効率的です。
運営者だけで改修を進めるのではなく、ホール・劇場の技術スタッフも含めて検討してください。

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