新型コロナウイルスの影響により、舞台芸術の現場は大きな打撃を受けました。公演の中止や延期が相次ぎ、それに伴って、舞台照明・音響・舞台監督など、舞台技術に関わるフリーランスの仕事も激減しました。
舞台技術の仕事は、現場が止まれば収入も止まります。会社員のような保障があるわけでもなく、「次の現場」が見えなければ、生活は一気に不安定になります。
こうした状況の中で、「こういうときのために、舞台技術フリーランスとしてどんな備えをしておくべきだったのか」という疑問が浮かびました。
今後の参考になればと思い、Twitterで「万が一、仕事を失ったときのために、何か備えていることはありますか」と問いかけてみました。
書けなかったブログの代わりに
本当は、いただいたツイートをもとにブログ記事としてまとめるつもりでした。ですが、状況の変化や気持ちの整理が追いつかず、なかなか言葉にできないまま時間が過ぎてしまいました。
そこで今回は、当時いただいたツイートを軸に、舞台技術スタッフとしての現実的な備えについて、あらためて整理して書いてみることにしました。
一つの現場、一つのスキルに依存しない
寄せられた声の中で、特に多かったのが「一つのスキルだけに頼らない」という考え方でした。
舞台の仕事を軸にしながらも、CADオペレーターとして建築・設備系の仕事をしている人、インテリアや建築関連の資格を取得し別業界でも働けるようにしている人、音響機材の貸し出しや設備点検・保守の仕事をしている人、スチル撮影や写真関連の仕事を並行して行っている人など、舞台技術の周辺、あるいは別分野に足場を持っている人が多く見られました。
これは「舞台を辞めるため」ではなく、舞台の仕事を続けるための現実的な選択だと感じます。
資格は、舞台技術と非常時の両方に役立つ
また、資格について言及している人も少なくありませんでした。
- 第二種電気工事士
- 危険物取扱者
- 無線系資格
- 大型特殊などの運転免許
これらは、舞台技術の現場でも直接・間接的に役に立つものです。仕込みや仮設、設備周りの理解が深まるだけでなく、舞台の現場が止まったときに、別の仕事につながる可能性もあります。
資格を取ること自体が目的なのではなく、「選択肢を増やす」「精神的な余裕を持つ」という意味で、非常時の備えとして機能しているように感じました。
技術は、いつ使えなくなるかわからない
舞台技術は専門性の高い仕事です。一つの分野を極めることは、もちろん大切です。
けれど今回のように、社会的な要因で一斉に現場が止まるという事態が起きると、どれだけ技術があっても、それを使う場所がなくなります。
「今、使えている技術が、来月も使えるとは限らない」
その前提に立ったとき、舞台技術以外のスキルや経験を持っていることは、決して遠回りではないのだと思います。
舞台技術を続けるための備え
今回いただいたツイートを通して感じたのは、多くの舞台技術フリーランスが、すでに現実を見据えた備えをしていたということです。
- 舞台を軸にしつつ、別分野にも手を伸ばす
- 資格や免許を取得し、現場以外の選択肢を持つ
- 以前の職歴や経験を、切り捨てずに残しておく
どれも派手な話ではありませんが、「生き残るための実務的な判断」だと感じます。
おわりに
舞台技術の仕事は、好きでなければ続けられません。だからこそ、「舞台だけで生きる」ことに固執しすぎず、「舞台を続けるために、何ができるか」を考えることが必要なのだと思います。
この状況がいつまで続くかは分かりません。それでも、備えがあることで、少しだけ前を向ける。
この文章が、同じように不安を抱えている舞台技術スタッフの方にとって、何かを考えるきっかけになれば幸いです。
