第1回・舞台スタッフを目指す学生と若手のためのZoomお話し会(後編)

前回の続きです。前回までの内容はこちら。

前回のお話:舞台スタッフを目指す学生と若手のためのZoomお話し会(前編)

この舞台業界についてどうなってほしいと思いますか?

くらげ:皆さん、この舞台業界についてどうなってほしいと思っていますか?例えば、「もっと高い給料がほしい」とか「寝る時間はほしい」「もっと健全な生活がしたい」とか。学生さんだったら、自分たちが聞いている様々な嫌なことがなくなってほしいとか。そういうのは全然甘えとか思わないし、むしろそれが当たり前の状態にしていきたいから、こうあってほしいのいうのがあれば教えて下さい。

sato:プロじゃないもっと下の方にいる人たちの安全を守って欲しいと思います。今、高所作業はフルハーネス着用が義務付けられましたけど、僕らサークルは仕事ではないので講習を受けるには個人で出すしかないんですよね。学生でもイントレに登るし、フルハーネスを着けなきゃいけない高さになっちゃったのけど、講習を全員受けなきゃいけないのか。

2019年2月1日以降、高さ2m以上の箇所で作業を行う場合はフルハーネス型の安全帯(墜落制止用器具)の着用と特別教育を行うことが事業者に義務付けられる。特別教育を修了していない者が該当業務を行うと法令違反となる。
大学のような3年、4年で入れ替わるところは安全意識も低いですし、プロと交わることもほとんどないので学生の中だけの安全という感覚、間違った感覚や知識はいっぱいあると思います。個人でやっている人、ちょっとだけしか音響や照明をやらない人の安全をもっと考えないといけないのかなって思います。

くらげ:そういう足場やフルハーネスの教育は大手の会社や大きな現場でバリバリ働いているプロたちの中での意識は高いけど、小劇場になるとどうしても意識は薄れちゃうのかなって言うのは感じます。
舞台スタッフという大きなピラミッドみたいなのがあって、上の方では危機意識があっていろいろ話しているんだけど、その一番下の方にいるその他大勢の人たちには話自体が届かないし、届いてもどこか遠くの国の話を聞いているような感じだし、講習を受けたりフルハーネスを買うにもお金がないという状態だし、二重苦三重苦になっているような気はしますね。

sato:なっていますね。ただ、危ないことには変わりないし、ケガをしたくないのでやらなきゃいけないのは確実だと思います。でも、学生のサークルだとヘルメットかぶらないところも見受けられるので、どこまでお金を回すか、どれを危ないと思うかというところがあります。

くらげ:それは難しい問題だな。大学や専門学校の舞台スタッフコースだったら、専任講師がいるから口を酸っぱくして実習でもヘルメットをかぶらせているし、危機意識、安全意識はあるんだけど、サークルとなったらその安全面は誰が管理するのってなっちゃう。情報もそういうところには入ってこないからフルハーネスのことを知らない人だっているだろうし、「イントレなんてちょっと登って作業するだけだからいいんじゃないの?」っていう人も多いと思う。

だからそういうところへの周知を一番しなきゃいけないんだけど、じゃあ誰がするかといったら、日本照明家協会か全照協(注:全国舞台テレビ照明事業協同組合)なのかな。でもきっとそこまで手は回らないだろうし、そこまで考えていないと思う。

sato:まあ「やるなら身を守れ」なんでしょうけど。うちのサークルでは共立(注:株式会社共立。照明・音響など演出を手掛ける大手企業)さんから機材を借りたり、うちのサークルからバイトを出したりしていて、そういうところでハーネスを借りたりしているので多少は情報が手に入りますが、その程度ですね。

くらげ:共立みたいな大手はしっかりしているので、そういうところで仕入れた情報を横に流していってほしいなと思う。他のサークルとか。でも繋がりないと難しいよね。

sato:なかなか難しいですね。

野村:さっきの安全の管理の話で言いたいことがあるんですけど、イントレやフルハーネスもそうなんですけど、一番身近でよくある問題なのが脚立の天板跨ぎですよね。そもそも脚立の天板跨ぎがダメなのは、脚立自体が真上からの負荷を想定していないというのと、バランスを崩したときに足がホールドされてるせいで頭から落ちちゃうからじゃないですか。それをわかっている人は、やむを得ず天板を跨がなきゃいけないときには支えている人に「跨ぎます」と一声掛けて注意して跨いでいるんですけど、必ずしもそういう人ばかりじゃないですし。先日、「事前に確認して劇場の脚立では高さが足りないときは、足場を持っていくべきじゃないか」みたいな意見をTwitterで見かけたんですけど、個人や大学生のサークルの規模ではそれもなかなか厳しいので、残された道は劇場側で余裕を持った高さの脚立を用意しておくくらいしかないですよね。この話題も度々上がりますけど、明確な結論が出なくてもどかしいなと思っています。

で、ここからが本題なんですけど、舞台スタッフって作品の裏方じゃないといけないって意識はあるじゃないですか。それが今は社会的存在で裏方になっちゃっているのは個人的にどうかと思っています。もちろん、お客さんの中でも舞台作品が演者だけで成り立っていると思っている人はいないとは思うんですけど、スタッフの存在ってほとんど意識されないですよね。作品を鑑賞する上ではそれでいいんですけど、このコロナ禍で舞台芸術作品が上演できなくなったときに、「アーティストは自分の作品をライブ配信して食いつなげばいいじゃないか。」という意見ばかりになりますし、業界に何かあったときにスタッフの困窮が日の目を浴びにくい事態になっていると思っています。
このあいだ、その旨と一緒に「スタッフはSNSで全然露出しない。」みたいなことをTwitterで言ったら、「スタッフには守秘義務があるから、今日はこんな現場行きました。みたいなことは言えない。」という意見を複数頂いたんですけど、僕が言いたいのはそういうことじゃなくて。例えば、以前音楽番組でサカナクションの特集をしていたとき、ライブに携わるスタッフ一同がスタジオに呼ばれてひな壇に並んでいるのを見て「おおー」って思ったんですけど、そういうところがあってもいいと思うんですよね。演劇、ミュー
ジカル、音楽雑誌などに何ページか誌面を割かれて(スタッフの)インタビュー記事などが載せられてもいいと思うんです。もしかしたら、裏方の仕事に従事している本人自体が裏方思考の強い方々なのかなって思うので難しいかもしれませんが、もっと社会的に表にいる業界であってもいいんじゃないかなと思います。

くらげ:裏方思考は強いと思いますね。SNSでもFacebookをやっている人はすごく多いんだけど、Twitterの方は盛んにツイートしている人も中にはいるけどごく一部だなと感じます。表沙汰にしないで、身内のスタッフ間だけで共有していて、面に向かって「こんなのやりました〜!」という人はごく一部だと思いますね。もちろん守秘義務があるので難しいところは多いんだけど、うまくやっていく方法はあるとは思うし、まず意識から変えていかないといけないかなとは思いますね。

K君:さっきの安全面のことに戻るんですけど、ミュージカルや大きな舞台をつくるときには安全面に関して大きな問題になっていると思います。それが何で学生さんたちまで回らないかと言うと、やっぱりお金がないからだと思うんですよね。例えば脚立は9尺脚立買えば手が届くんだけど、買えないから6尺でやらなきゃいけないときに、天板に乗らないと手が届かないとなってくる。そういう金額面はどうしても拭いきれない問題ですよね。

これは機材を貸し出ししている大手の企業が、脚立やフルハーネスなどの面倒を見てあげてもいいんじゃないかという意見もあって、お金は取らずに学生をフォローするというのがほしいなと学生時代に思っていました。

あと、裏方の露出についてなんですけど、僕はけっこう露出が好きなんですよね。ただ会社の都合上あまり大手を振って表には出られないんですけど、ただやっぱりそこはプレイヤー側との相談だと思うんですよ。音響をやっているとけっこういろんな情報を得られるんですね。この人はこういうエフェクターを使っているとか、実はここでは歌っていないんだよというように。だから裏方が表に出てほしくないという方もけっこういらっしゃって、そういう情報をバンドのアーティストさんなんかは言ってほしくないんですね。音響さんが何かをしているということすらお客さんに考えてほしくないから言わないでというのもあると思います。

逆に、芝居とかでプランニングをしていると、「もっと表に出てお客さんを呼んでよ。」とか、「君のプランはいいんだからもっと表に出していきなよ。」という人もいる。それは役者さんともコミュニケーションを取っていかないといけないなって学生時代は思っていました。ただプロになってみて思うのは、露出をしないのは自分の身を守るためでもあるのかなと思います。いつ誹謗中傷が飛んでくるのかもわからないし、僕が有名なアーティストの名前を挙げてツイートしたら、過去の学生時代のツイートまでファンに見られてしまうこともあると思うんですよ。そこで、「あのアーティストの音響さんは昔こんなことやっていたよ。」「お酒飲んで遊んでいたよ。」みたいに釣り上げられてしまうのもアーティストとしては嫌だと思います。そういうリスクをどう管理していくかを考えた上で露出していくのが大事かなと思います。

あともう一つ。個人的な意見としては、もっと若手にチャンスを下さいって思います。上の立場の人がオペをやるのは見ていて勉強になりますし、「うわーこうなりたい!」、「すごいな」と感じるんですけど、「俺がやっているのを見てろ」というのが続くと、どんどん下は頭打ちになっていくだけですよね。その人が後ろに付いて若手にやらせてあげる。若手じゃなくても中堅レベルにオペをやらせてあげて、あとでダメ出しをするという関係性を作っていかないといけないと思っています。現役の人に教えてもらうのと古い知識の人が教えるのとでは全然違うので。若手が成長するためにも、最先端の現場に出ている人が第三者として観る、第三者として聴くというのも大事だと思います。

くらげ:そうなんですよね。なんか上の方には若手を潰していく人たちばかり生き残っていて、「俺達がしてきた苦労をお前らも味わえ」というような人は多いなと思います。経験者として尊重すべきかもしれないけど、若手にチャンスを与えるためにも早々に引退を考えてねって思いますね。「いつまでも俺は現役だ!」じゃなくて若手を育てるために教育者になってほしい。

現役のプロである視聴者の意見

くらげ:だんだんネタが尽きてきてしまったので、ここで視聴者の意見も聞いてみようかなと思います。松本さんいかがですか?

松本:裏方の広報やSNS発信に関してなんですけど、やっぱり裏方体質ってのは多いと思います。そういうことをするのにかなりエネルギーを削がれるというのがどんな職業の人にもあって、SNSで発信できる人というのはほんの一握りなんじゃないかなと思います。ひょっとしたら、演劇関係者なんかはやっている方なのかもしれないなと思いますね。

くらげ:安全面に関しては何かありますか?

松本:事故は起こるときは起こるものなので、保障をちゃんとしたってやって思いますね。安全のためにヘルメット被れ、フルハーネス付けろ、資格取りに行けっていうても、その分ギャラ上がるんか?って思う。そこまで出してくれへんやろ。

くらげ:そうですよね。

卒業したら会社に入る?フリーランス目指す?

くらげ:学生の皆さんに質問です。学校を卒業したら会社に入りたいですか?それともいきなりフリーランスを目指しますか?

sato:オペレーターを目指しているわけではないので、会社には絶対入りたいです。今、ヒビノさんのような照明だけじゃなくて映像もやっている会社もあって、今後はそっちのほうが未来は明るいんじゃないかと思っています。開発をやって、海外の生産拠点ともある程度繋がりがあって、それでいてドームでやることもあるので、半ばぜんぶそこだけでできちゃいますね。

あとは、東京舞台照明さんのようなホールの管理しているところは、このご時世でもある程度仕事があるので強いんじゃないかなと思っています。フリーランスやるのは怖いなと思いますね。特に学生にはフリーランスという響きはかっこいいけど何やっているのかわからないので。

くらげ:このコロナ禍でよりフリーランスの危うさみたいなものが浮き彫りにされちゃったというのはあるかもしれない。

kitamura:僕が今考えている会社の候補として東京舞台照明とかも考えてはいます。

くらげ:大手は安心というところは大きいかもしれないですね。例えば東京舞台照明や共立など大手のところはホワイト企業化してきているので、例えば月の休みを規定通りに取る、時間外手当や深夜早朝手当などそういうところはしっかり改善してきているのは感じますね。

私もブラックなところにいたときは「有給?ナニソレ?」な状態だったし、勤怠管理はするけど全く給料に反映していない状態だったけど、今はホワイト企業でカレンダー通りの休日日数を取れているし、契約社員でも有給が取れていて、残業代は30時間分見込み残業代として給料をいただいているんだけど、31時間を超えると15分単位で残業代が付けられるし、深夜早朝手当もきちんともらえているので、普通の企業になってきてはいるなと感じるので、そこは大手の強みかなとは思いますね。

いけちー:くらげさんに質問なんですけど、フリーランスを始めて1年目から仕事を取ってこれるのかなって。身近にいないからわからないんだけど、なにか方法ってあるのかなって思いました。

くらげ:結局、この業界って人と人のつながりが大きいと思いますね。照明や音響会社のバイトをして照明会社とか音響会社とつながっておくとか、フリーランスをやっている先輩、現役の講師とつながっておく。とにかくコネです。コネで仕事は来ます。私はフリーになったのが小屋付きやっていて会社員を辞めたときだったんですけど、仕事をいただいたのはすべて人からの紹介でした。「フリーになったなら仕事受けてよ」とか、付き合いのあった会社の人から発注来たりとか、人と人とのつながりで食べていました。なので、人とつながるというのは大事ですね。

今の会社にはどうやって入った?

くらげ:あれ、そういえばみいしゃさんは東京の会社はどうやって探したんですか?

みいしゃ:Twitterです。ネット上の人と人とのつながりです。Twitterでつながっていた人から他の会社を紹介してもらうときに、「自分の会社も募集中だよ。」って言われたので、「じゃあ、ぜひ!」という感じで入りました。だから、こういうやり方もありますよってことで。

くらげ:やっぱり、Twitter、Instagram、Facebookなどで照明さんや音響さんとつながっておけってことだな。こっちからがんがんフォローしに行くのがいいかもしれない。K君はどんな感じで今の会社に入ったんですか?

K君:僕は普通に就活して入りました。公募をしていたので履歴書を出して面接をしてという一般的な入り方をしています。

くらげ:入ってみて印象はどうでした?

K君:んーやっぱり夢の世界の裏側は泥だらけだなと。ヘドロ舐めてがんばるところだなって思いながら、2年目も泥をかぶりながらがんばります。

くらげ:泥かぶりながらももう、上の人間に泥を投げつける勢いで行ってほしいな、この際。

K君:でも、同じ業界に進んだ同級生に聞いてみると、ホワイトなところも多いなと感じたので、学生さんにこの業界がブラックだよと言うのは違うかなとは思いますが、未だやっぱりブラックなところはあります。朝の6時に出勤させられて、帰るのが0時でタクシーで帰らされるけど、タクシー代を出さないところもあるし。

くらげ:なんかこう、ホワイトなところとブラックなところで格差がどんどんできているという感じがするんですよね。ちゃんと意識しているところは「変えていかなきゃ」っていって変えていこうとしているけど、意識していないところは今のまま気にしちゃいない。「ブラック?え?みんな好きでやっているんでしょ?」という感じでけっきょくやりがい搾取になってる。

K君:変に大手になるほど、「君辞めても代わりはいるから」とか「うちの名前があれば人は来るから」というのがあるので、気を付けたほうがいいです。特に演劇業界は気を付けたほうがいいです。

くらげ:駒にしか感じていないような。この間Twitterで見たのが、社長がパワハラ、モラハラの宝庫で精神的に参っている人がいたんだけど、そういう人に限って好きで始めて会社立ち上げて、俺に付いてこれるやつは付いてこい!みたいな感じの人が多いから、本当は事前調査ができるのが一番かもしれない。バイトで入ってどんな雰囲気なのか探るとか。

若手は生活が厳しい

くらげ:K君はどれくらいまで会社にいるつもりなの?

K君:今のところはまだ辞めるつもりはないですね。トップに上り詰めるまではがんばりたいと思っています。このコロナ禍なので、会社に依存すると仕事の幅が狭くなることもあるので、グローバルに音響以外でも***食べられなくなったら離れるかなと思います。

くらげ:あとは少ない給料でどこまで生き延びれるかってところだよね。死活問題でもあるんだけど。

K君:あとせめて3万円でも上げてくれれば家賃が余裕持って支払えるんですよね。あと、もやし生活から抜け出したいですね。

くらげ:もやしと豚肉とかね。

K君:冷凍うどんはマストですね。

くらげ:結局のところ、仕事が多いのが東京だから東京に住まざるを得ないんだけど、東京に住むと家賃が高いところで、いろいろ詰むよね。

K君:あまり遠くに住んでも終電が早いですし。

くらげ:終電早いと文句言われるし、タクシー代も高くなるし。

K君:住むところからして難しいんですよね。

くらげ:舞台スタッフで一人暮らしをしている人は、家賃は6万がギリなんじゃないかな。7万円いくと厳しいよ。

K君:厳しいですね。若手は6万円でもけっこういいところだねってなります。

くらげ:4万円出してなんとか住めるくらいじゃないと、間取りなんて選んでられないし、20平米行けばいいかなってところ。

K君:1Kもしくは1Rで、1Kだったら贅沢なくらい。

くらげ:ユニットバスでキッチンのコンロは1口でって感じで。

K君:それでも自炊をしないと食べていけないですね。ま、好きでやっているからいいんですけど。

くらげ:もう、早く稼げるデザイナーになってくれ。

K君:そうですね。稼げるようにがんばります。修行ですね。

くらげ:みいしゃさんは東京ぐらしは大丈夫?

みいしゃ:実は私、同居人がいるので家賃は2人で割っています。最初から無理だと思っていたので、そういう方法もありますよ。

くらげ:金沢と東京じゃ家賃が違いすぎるもんね。

みいしゃ:倍ですね。

どこで仕事をしたい?

くらげ:学生さんたちはやっぱり東京に出たい?

アン:やっぱり東京とか神奈川とか大阪とか、栄えているところに行きたいですね。仕事の量的に。

くらげ:大阪の事情は松本さんが詳しいから聞いてみるといいかも。いかがですか?

松本:そうですね。僕は今でも3万とか4万とかのところにしか住んだことがないです。しかも駅からは10分から15分くらい。

くらげ:大阪って家賃は東京と比べてどうなんですか?

松本:たぶん安い。

くらげ:暮らしていくには大阪は住みやすいですか?

松本:住みやすい。20年東京に住んでいたことがあるので、比べてみるとなんか楽ですね。あと生活を安く済まそうと思えば安くなる。

くらげ:食費は安く済みそうですね。

松本:あと、舞台の仕事的な大阪と東京の違いを言うと、東京は割と専門化しやすい。コンサートならコンサートのみとか。大阪はそれだけだと食っていけないし、割とオールジャンルやる人が多いです。あと割りきって気楽になっている人は多いですね。

機材が触れない状態でどうやって1年生を勧誘する?

sato:学生さんの中でサークルとして舞台やっている人いますか?みんな学部とかですよね。サークルだと広報が必要になってくるんですよね。特に今年は1年生は3,4人しかいないのかな。十数人しか来ないところですけど。今年入ってきた1年生が育たなければ、サークルがなくなるんじゃないかなと思っています。サークルの中で音響と照明と進行って形で舞台監督と美術とMcとで5パート全部であって、1パート10人くらいで合わせて60人くらいの規模なんですけど、1学年だと1パート2人か3人なんですよ。今年はそこの広報をどうやっているのかなって思っているんですけど、他のサークルではどうしているのか聞きたかったんですけど。

野村:野村:僕は今1年生なので集められる側の人間なんですが、一般の大学なので演劇ができる場はサークルしかないです。その中で唯一、大学公認の演劇サークルがあって、僕もそこに入ることを検討しているんですけど、広報はTwitterとInstagramでそれぞれ一日2回程度の投稿でPRやってますね。サークルの一部の方と入会希望の新入生のLINEグループがあったり、キャンパスに入れない代わりにZoomで説明会とか新歓イベントをやったりもしています。僕は公演がやりたいだけなのでまだ入会はしていないんですけど、8月までに入会した人たち向けにZoom演劇の発表会みたいなものもやっているみたいです。

sato:1年生向けに何かやろうというのは考えているんですよ。今、うちの大学は構内に入れないので機材を触ることができないんですね。予算が降りないから自分たちで買ったAmerican DJの安いムービングライト2本とPC卓のインターフェイスを倉庫に置きっぱなしで、そろそろカビが生えていないか心配です。何もできない状態で、機材触れたらもっといっぱいできるけど、Zoomで説明会やってもマイクケーブルで八の字巻やるくらいしか家ではできないので、大学に入って始めて機材を触りますっていう人は初心者のまま2年になるんだろうなと思います。

もともと、大学生で機材触る時間は授業とか課題との兼ね合いもあるのでそう多くはないので、機材に触れない時間が顕著に伸びてきたなと思います。今、裏方が好きな大学生は個人で買った機材が増えてきているんじゃないですかね。

アン:あの、satoさんの話を聞いていて思ったんですけど、私が今1年生で照明のコースにいて実技ができない中で前期の授業をどうやって過ごしたかっていうと、オンラインで舞台用語集だったり電気の知識、機材の名前を覚えさせるという授業をやっていたんですね。

今は週2日学校に行って機材を吊ったり実際に明かりを出したりしているんですけど、最初に知識を入れておくということをやっていたおかげで、みんな一回目の授業で吊り込みも回路取りもできたんですよ。だから最初の知識があるとやりやすさが全然違いますね。だから、できない期間は知識を蓄える期間にすればいいと思います。

sato:大学は短い期間で入れ替わっちゃうので知識が定着しなくて、本当は講師を呼んで勉強会ができたらいいなって思いますね。

くらげ:satoくんが持っている悩みってそのまま高校演劇部にも当てはまる悩みだよね。機材はあるけど、使い方はわからないしちょうど1年生たちは触れないし。部員勧誘の仕方とか、後輩が入って来ないと存続できないとかいうのは大学のサークルに限らず同じ共通の悩みを抱えているから、そこらへんもうまく共有できたらいいのかなって今思ったんだけど。

sato:高校は授業再開したけど、大学はまだ入れないんですよね。

くらげ:とにかく機材入れないのはきついよね。だから機材のデモみたいなのをZoomでやって興味を持ってもらって勧誘するという手段はあるけど、機材が手元にないし。野村くん、何かアイデアないかな。

野村:オンラインで機材の使い方みたいなのをやるなら、Twitterに機材マニアの方がいっぱいいるので活かせるんじゃないかなって思いますね。

高校演劇ではどうやって照明技術を学ぶ?

野村:さっき高校演劇について話が出ましたが、高校演劇って大学より入れ替わりの周期が短いじゃないですか。長くて2年半、短くて2年弱。それに公立だと顧問の先生の異動もあるって考えるとどうしても技術の継承が難しいと思いますね。近所の高校の外部指導講師の方から、その高校がちょっとした機材とホールを持っているので、照明や音響を教えにきてもらえないかという話を頂いています。そうやって外から知識や技術を習得できる場を積極的に作ってあげるべきなんじゃないかな。できれば高校演劇連盟を媒介して。

今の時代、インターネットで情報を収集できるところもだいぶ増えたじゃないですか。僕が演劇部に入ったばかりで右も左もわからないような子から舞台照明について相談受けたときは伊藤先生の『ザ・スタッフ』という書籍を勧めますね。

演劇部をはじめにも舞台を使う方々にぜひ読んで(使って)いただきたい一冊。

Webサイトなら丸茂電機の「初めての舞台照明」
参考 初めての舞台照明MARUMO

個人であれば「ネコでもわかる照明の部屋」
参考 ネコでもわかる照明の部屋ネコでもわかる照明の部屋

それで実践をしたくなったら、「こういう場があるよ」って周知することができるプラットホームが必要で、それを用意できるのは高校演劇連盟しかないんじゃないかなって思いますね。

高校演劇では音響技術をどうやって学ぶ?

野村:あと、書籍でもWebサイトでも、音響を学ぶ場がないというのは問題として大きいかと思いますね。

K君:あの、音響を勉強できるところがないということに関してちょっといいですか?音響には機材はいっぱいあるんですけど、フェーダーを上げたら音が鳴るんですよ。いい音響さんって機材をいっぱい知っていることじゃなくて、フェーダー上げ下げの操作だけでバランスを出せる音響さんがいい音響さんなんですね。高校演劇の審査員をやらせてもらったことがあるんですが、高校生たちは我々プロにない感覚を持っていて、こんなところで音を入れるのか、こんなことをするのかっていう高校生ならではの発想がいっぱいあるんですよ。

音響について何か書いている人は、機材の使い方やどうやって音が鳴るかを教えるより、クラシカルなことを書いている人は多いですね。「ここでベースが出てきて、パーカッションが前に出てきて、ここにストリングスがいて、ストリングスが出てくるタイミングでパーカッションを上げるのが今の若い子だけど、パーカッションを上げ過ぎたりドラム上げ過ぎたりベース上げ過ぎたりしすぎると、ストリングスラインが消えちゃっておいしくないよね。ここにせっかくいいストリングスラインがあるのに。」というような感じで、プロの音響さんたちは機材と言うよりは思考、考え方かなと思いました。

野村:そういうことはもちろんあると思うんです。でも僕自身がいろんな大会を観に行ったり、地区大会の会場スタッフとして高校生たちを見て思うのは、ある程度のノウハウや実力がある学校はそういう話ができると思うんですけど、それ以前のところもけっこうあるんですね。ミキサーから出ている端子をスマフォにつないで、YouTubeの動画を流したり、クリップボックス(注:動画・音楽・ドキュメントをダウンロードして保存できるア
プリ)に落とした動画を流している学校も中にはあるので。

K君:僕は今高校演劇に携わっているんですけど、高校演劇って今はCDの版権はチェックしなくなったんですか?

野村:公式の大会じゃないイベント的なものではまずないです。公式の大会では、東京都の例だと地区はチェックしないです。去年初めて、都大会に出場したんですけど、楽曲の著作権だけでアレンジなどに関しては何も言われなかったですね。

K君:そうなんですよね。僕は曲を流すのはクリップボックスでもYou Tubeでも芝居だったらその心情に合っている音が鳴っていればいいと思うんです。芝居を観ていて、「うわーこのシーンにこの音めちゃくちゃいいな」と思ったらそれが正解だと思います。僕はYou Tubeの音を鳴らす鳴らさないは機材ではなくてマナーの領域だと思っていますね。

版権のあるCDを買うというのがマナーだったので、CDを買って勉強目的で使用するということを申請するのが僕の時代の高校演劇だったんですよ。高校演劇って学問の領域なので著作権申請の場合はお金を取らないんです。でも最近じゃiPhone持ってきてポン出しできるアプリ使ってオペしている学生が多いので、マナーモードにする、機内モードにしておく、通知は切っておくなどの注意はしてますね。

これは僕個人の意見なんですけど、演劇のスタッフを難しいものにしたくないんですよ。もっといい音を流したいと思っている人が「どうやって音が鳴っているか」とか、「大きな音を鳴らしたいんだけどどうしたらいいか」というときに、やり方を教えていけばいいんじゃないかと思っているんですね。もちろん機材を知っているに越したことはないんですけど、機材を知らないとできないってことじゃないということを周知したほうがいいと思うんですね。

野村:それはもちろんそうなんですけど、YouTubeやクリップボックスのアプリの再生ボタンをタップするだけだと自分が思っているタイミングで音が出せなかったり、自動再生でSEのあとに突然違う音がながれちゃったりとか、そういう機材的なトラブルっていうのも多いので、ポン出しアプリなどのツールを使ったオペ方法など、そういう情報を提供できる場が必要なんじゃないかなと思います。
それから、音楽に役者のセリフをミックスしたものをスピーカーから流す演出のときに、実際に会場のスピーカーで流したときに音楽のベースやドラムの音にかき消されてセリフが全く聞こえなかったというようなことや、音をミックスしたいけどわからないからCDを同時に2枚流しているという学校もあったので、自分のやりたいことをどうやって表現するかに対してのサポートが必要なんじゃないかと思っています。

K君:高校演劇の場合は、その場でどうするかを考えるのが楽しいことなんじゃないかなって考えてしまうんですよね。例えばプロが音響や照明を教えることになっても、やっぱり音響も照明もその人の意見なんですよ。プロが「こういう明かりがあるよ」って提示したらそれしか見えなくなってしまうと思うし、音響でもプロがいいタイミングで流して音量決めても、他の会場でその人が決めた音量で流せばいいかと言うとそうではないですよね。プロが教えるとしたら、「自分の耳で聴いて耳で覚えて、会場に行ったらそれに合わせるんだよ。役者の声を聴いてそれに合わせるんだよ」としか言えないですよね。プロが教えるレベルの取り方って「声を聴きなさい」だったり、「台本を読みなさい」だったりするので、上の人がずっと同じことを言っているのはそれしかできないからだと思うんです。

野村:音響さんの仕事は自分の聴覚を基準にやっているところが大きいですよね。直接教えるのは学生側のハードルも高いですし、感覚メインの話になってしまうと思うので、そうじゃない部分をWeb上でテキストベースで書いてもらえないかなと思っています。

K君:音響は演目によっても会場によってもまちまちなので、一概に当てはまることがないので、その都度聞いてくださいとしかいえないんですよね。だから音響さんは聞いてきたら答えるけど聞かれなかったら答えない、閉鎖的な人が多いんですよ。

野村:なんとか低い敷居で情報を得られる場があればいいんですけど難しいですよね。

くらげ:音響は難しいですよね。K君は大学でどういう授業を受けていたの?

K君:大学では最初に舞台基礎の名称を覚えて、それから台本を渡されて自分たちでプランニングをする授業がほとんどですね。その台本にどんな音を付けたらいいのかを考えて、その考えを発表してそれに対してディスカッションするというのが多かったですね。

くらげ:そういうのを高校演劇でやったらどうなんだろう。

K君:それはめちゃくちゃおもしろいと思いますよ。同じ台本を持って、意見を持ち寄ってっていうワークショップみたいな感じですよね。そういう場があればあるといいですね。

くらげ:それで作りたい音を自分たちで考えて、その音を出すにはどうしたらいいかってところから音響機材への興味が湧くんだったらそれもいいかなって思いますね。

野村:僕が参加した高校生裏方ワークショップというのがまさにそれと同じことなんですね。音響、照明、役者、大道具の4コースに別れていて、土日4日間で20分くらいの課題の戯曲を作り上げて、上演するという内容で、その中には基礎から学ぶ座学と、実際に機材を触って学ぶ実技もあるんですね。ただ、年一回東京でしかやっていないので難しいところはありますが、東京近郊で裏方を学びたいという人にはおすすめしています。

シュミレーターでサークル勧誘

くらげ:そうやってみんなで作品作っていくみたいなところから、興味引きそうな感じでサークル勧誘したらみんな入るかもしれないね。

sato:うまく広報できればいいんですけど、裏方だけのサークルって写真撮らないので過去のデータも少なくて。動くのが好きな人達だから撮っているのは卓周りとかなので、そういうのは広報には使えないじゃないですか。

くらげ:じゃあ、もうサークルは機材マニア向けに広報したほうがいいのかな。

sato:でも、こういう状況では食いつかないですよね。だからこの時期にシュミレーターとか勉強して全員ができればいいなって思っています。

くらげ:そのシュミレーターなんだけど、ちょうど今視聴してくださっている岩城さんという方がシュミレーターに関して詳しいので、ご登場いただいてお話を伺ってみましょうか。

岩城:シュミレーターは僕はCaptureというものを使っていて、学生版もあって安く使えます。これを使うとかなりリアルに実験ができるんですね。ただこれは機材じゃなくて光を実験できるだけなので、例えば機材のネジがどこにあるかなどはシュミレーターではわからないわけですよね。機材の扱いという意味では使えないんだけど、出てきた光をどう組み合わせるかというデザイン方面にはけっこう有効なんじゃないかと思いますね。

くらげ:そのデザイン方面で使えるのをうまく利用して、例えば食いつきそうな有名な曲に合わせてやってみるとか、そういうのにつかえないかなと思って。

岩城:使えるでしょうね。それはリモートだと難しいと思うんだけど、ぱっと思いつくのは、DoctorMXなどの調光卓があったとして、調光卓でCapture内の照明を点け消ししたりムービングを動かしたりすることはできるんですよ。だから知っている曲に対してプログラムをやってみることはできるよね。出演者はいないけど、人型を3個ステージ上に置いてそれをパフュームとして見立てて、いろいろ照明で遊んでみるというのは、最低限DMXを出すものとシュミレーターがあれば実験して楽しむことはできると思いますね。

sato:一番ネックなのが大学生のパソコンのスペックなんですよね。僕のパソコンは普通に動くんですよ。後輩たちに機材のパッチを配布したんですけど、それが使えるパソコンの環境の人が少ないので。だから全員がそれをやるというのは難しくて。

野村:それ、誰かのパソコンをZoomで共有して遊んでみるというのもおもしろいですよね。

いけちー:それ、誰かのパソコンでDMXを出力したり、シミュレーションしたりする環境を作って、リモートアクセスしてもらうといいですよ。そうするとそれぞれのパソコンのスペックが悪くてもなめらかに動かせます。ある程度の通信環境が必要になるけど。

sato:ありがとうございます。それやってみます。

くらげ:そろそろいい時間なので、これでお開きにしたいと思います。ありがとうございました。では、解散!

締めくくり

いかがでしたでしょうか。学生の方も新人の方もそれぞれどうしていけばいいのかを真面目に考えていらっしゃるなと感じました。

この会はまた次回も開催したいと思っています。

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