高校演劇で音響や舞台監督、照明などのスタッフワークの楽しさに魅了され、本職を目指す高校生は多いことでしょう。もちろんわたし自身もそのうちの一人です。
高校演劇と筆者の関係については、noteの方に書いていますので気が向いたら読んでみてください。
わたしは高校演劇を経て舞台スタッフを目指したとき、高校演劇で見た舞台スタッフの世界と思い描いた舞台スタッフの世界、現実の舞台業界とのギャップに戸惑ってきました。
そこで、舞台スタッフを目指す高校演劇経験者に伝えたいことを書いてみることにしました。
1. 舞台スタッフ向けの専門学校や大学に進学しよう。
せっかく舞台スタッフを目指すなら、高校を卒業してすぐにでも舞台技術関係の会社に就職したいという気持ちはよくわかります。でも、舞台スタッフにも学歴は必要です。
会社を移籍するとき、万が一舞台の仕事から離れて別の職に就くことになったときなど、学歴の壁を思い知ることになります。
舞台技術以外の学科もしくは学科がない大学や専門学校に進学しても舞台技術関係の会社への就職は可能ですが、学校からの斡旋は難しいため、自分で就職口を探すことになります。
舞台技術に関する就職先の選択範囲の広さはやはり舞台技術関連の学校には敵いません。
舞台スタッフ向けの学科がある専門学校や大学についてはこちらの記事をご参照ください。
舞台スタッフの仕事をしたい人が進むための学校一覧|xSTAGE
2. 学生のうちに幅広く学び経験を積んで視野を広げよう
専門学校や大学に入ったら、選択科目は舞台技術以外に興味のある幅広い分野の授業を選択しておきましょう。
舞台技術以外のことはもう習いたくないと思うかもしれません。ええ、その気持ちよぉーくわかります。
でも、「法律」や「美術史」「世界史」「英会話」「一般教養」など、一見すると舞台技術に関係ないと思うことがあっても知識や教養はあなたの身を助けます。
また、就職すると長期間の休暇を取るのは難しくなります。自転車や青春18きっぷ、原付で日本一周をしてみるのも学生のうちならできます。
また、学生のときにパスポートを取って日本以外の国へ行き、その国の文化や芸術に触れる機会があればできる限り触れておきましょう。
そうそう、学割が効く学生のうちにAdobe CCを契約して使ってみるということ、普通自動車免許を取っておくということも忘れずに。
3. 高校演劇の経験だけで舞台を知ったつもりになるな
これは本当に筆者自身に言いたかったこと。
くらげが在籍した高校演劇部は活動が盛んで、顧問の働きかけもあって多くのホールや劇場で上演する機会に恵まれました。
小屋付きの方にも優しく技術を教えていただいたので、それで知識と技術を身につけた気になっていました。何でもわかっているような態度で授業を受けていたし、経験者のつもりで舞台照明のアルバイトをしていました。
でも、そこで身につけた技術や知識が通用するほど舞台の世界は甘くありません。中途半端に身につけた技術や知識で満足していては、かえって自身の成長を妨げます。
高校を卒業したら高校演劇で身につけた知識と技術は一度捨て去って、初心者として舞台スタッフを目指しましょう。
4. 演劇以外の舞台作品も鑑賞しよう
高校演劇を経験したからには演劇スタッフを目指す人のほうが多いと思います。でも、舞台スタッフとして関わるジャンルは演劇だけに限りません。
ライブやクラシックコンサート、バレエ、ダンス、伝統芸能、お笑い、イベントなど多岐にわたります。
演劇だけにジャンルを絞らず、とにかくいろいろな作品を観るようにしましょう。そのときに観た作品があなたの引き出しになります。
ただし、中途半端な知識を持っているときに陥りがちなのが、いろいろあら捜しをしたくなるということです。
あらを探すのではなく、いいと思うところを見つけましょう。
5. 師となる人を見つけて学ぼう
照明デザインについて学ぶには、実務経験を積んで覚えるしかありません。
実務経験と言っても、デザインをすることだけではありません。多岐に渡る作業から照明デザインは成り立っています。トラックやワゴン車への機材の積み込み方、現場でスムーズに進行するための事前の段取り、現場の作法や流れ、他セクションとのやり取りなど、実務経験を積んでいかないと身につかないことは山ほどあります。
照明プランナーを目指すなら、学生のうちからまずは「この人の明かりが好き」「この人のもとで学びたい」という人を見つけましょう。いろいろな作品を観るうちに、好みというものが見えてくるはずです。
もし「この人のもとで学びたい!」と思う人に出会ったら、勇気を出してコンタクトを取ってみましょう。
もしかしたら、学生でも使ってくれることがあるかもしれません。
6. 母校を訪問しても、ドヤ顔で指導しない
専門学校や大学で技術や知識を身につけると、母校の演劇部をOB/OG訪問してドヤ顔で指導したくなりますよね。その気持ち、よーーーーぉくわかります。
でも、在学時にOBやOGが訪問してきて勝手に指導されるの、ものすごくウザくなかったですか?同じことしたら、もちろんウザがられます。
もちろん、顧問の先生や後輩から指導をお願いされたら教えてかまいません。人に教えることで、自分自身も理解が深まります。
ただ、やたら専門用語を並べて知識を披露したり、ドヤ顔で「俺ってすげーだろ」風を吹かせると、速攻で嫌われます。あくまでも、優しくわかりやすく、ね。
7. 母校のホール公演を手伝うとき、イキらない
舞台技術を学び始めたOBやOGが必ずといっていいほど訪問する場が、ホール公演。ここでも、ウザい先輩と尊敬される先輩の差がはっきりと出ます。
よくいるのが、搬入時から妙にハイテンションで先導を切る熱い先輩や、いかにも知っているよ風を吹かしてホールや劇場の小屋付きさんに話をする先輩。「これってこうなんですよね〜?」とか「ここは丸茂が入っているんですね!」とか。
ほんとウザいですね。あれ、なんか突き刺さって痛い。
尊敬される先輩になりたいのであれば、よけいな手出し口出しはせずそっと後ろから見守りましょう。
もちろん、危険につながることがあればすかさずフォローしてください。
8. 誤って受け継がれてしまった伝統はそっと訂正しよう
よくあるのが、誤った知識が「部の伝統」として後輩に伝わってしまうこと。
正しい知識が年月を経ていつのまにか誤った知識に変化してしまったり、顧問の先生が間違えて覚えてしまっていたり。
その知識や価値観が古いものとなってしまっていることも十分にあり得ます。
ところが部活動にはヒエラルキーというものが存在していて、伝統>顧問の先生>OB/OG>3年生>2年生>1年生>部活に関係ない人、という感じになっています。
部員たちにとって自分より上の立場の言うことが絶対なので、「どうかな」と思うようなことを外部の人間が感じたところでなかなか聞き入れてもらえないこともあります。
顧問の先生や諸先輩たちのプライドを傷つけないように顔を立てつつ、角が立たないようにそっとOBやOGが訂正してあげてください。
締めくくり
ここに上げたごくほんの一部はわたしの実体験を基に、痛すぎて血を吐きながら書きました。ゲホゲホ。
中には、今思えばやっておけばよかったな思うこともあります。
わたしが高校演劇をキッカケに舞台スタッフの道を目指してから、途中で離れたこともあるけどこの道を突き進んだことに後悔はしていません。
いつかどこかで、舞台スタッフになったあなたと仕事ができることを心から楽しみにしています。
それでは、どこかの現場でお会いしましょう。