全国舞台照明技術者会議でLED照明について学ぶ〜2日目〜

技術者会議2日目です。

今日は、13時から18時までの開催です。会場は、引き続き池袋の東京芸術劇場プレイパークです。
観客数は、前日よりも若干増えたかなという程度。もう少し認知度が上がれば増やせるのではないかと思います。

本日の内容は、以下のとおり。
13:00〜15:00  ワークショップ 『最近機材の特性・表現』
15:00〜17:00  照明デザイン 『明かりの作り方の実演 照明デザイン・服部基』
17:00〜18:00  シンポジウム  『今後のLED照明の可能性について』

最新機材の特性・表現

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講師は、Creative Art Thinkの田中氏と藤巻氏です。タイトルでは最新機材となっていますが、最新機材ではないそうです。

このワークショップで使われている機材は、全部ムービング機材です。種類は、Martin社のMAC Quantum Wash
High End Sysytem社のSHAPESIFTER
Clay Paky社のB-EYE K20、Ayrton社のMAGICPANEL 602がそれぞれ2台づつバトンに吊ってあります。

MAGICPANEL 602以外はすべてウォッシュライトですが、MAGICPANEL 602に関してはピクセルマッピングと言ってこの機材を大量に吊って映像を流すのに使うそうで、映像を流しながら本体が動くという使い方をするそうです。

MAC Quantum Wash

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(出展:http://www.martinjp.com/macquantumwash.php

ウォッシュタイプのうち、Martin社の製品の場合、点灯面がリング状になっており、フォアグラウンドレイヤー(前面)とバックグラウンドレイヤー(後面)の2面に分かれていて、それぞれ前と奥で違う色を出すことができるようになっています。
表側はさらに3重に分かれていて、3つの色を出すことができて、なおかつ表に光として出ない裏面の色を見せることができるようになっています。

ただ、これだけ機能が分かれていると時間がいくらあっても足りません。なので、マクロという機能がついていて、特定のパターンの色を呼び出すことができます。
まずはコチラ見てください。


B-EYE K20

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(出展:http://www.claypaky.it/en/products/b-eye-k20

こちらも、Quantum Washと同じようにフォーカスが効くのでフラットになる機材です。
粒々が37個あり、それぞれ制御できるため最大で146ch、ウォッシュタイプのムービングとして使用する場合は20ch使います。

また、同じように裏と表でレイヤーが分かれていて出た光と見た目の色を変えて出すことができます。また、個別に色を変えることも可能です。そういった機能を簡単に制御するため、こちらもマクロ機能が搭載されています。

どんなものかはコチラをどうぞ。


MAGICPANEL 602

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(出展:http://www.hibinolighting.co.jp/brand/ayr_magicpanel602.html)

灯体がとても薄い形状をしているので、縦横360°にぐるんぐるん回転して照射できます。
また、機材自体にスイッチングハブを搭載しているため、隣から隣へとイーサネットでの配線が可能です。

SHAPESIFTER

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(出展:https://www.highend.com/products/led/shapeshifter

こちらは、点灯する面が7分割されていて、それぞれ独自に動かすことが可能です。
今主流となっている、チップに4色が入っている4in1ではなく、RGBそれぞれのチップが搭載されているタイプです。こちらは、照射面があまりきれいではないとのことで、ビームで見せるタイプです。

このワークショップに対する感想

このワークショップに関しては、幅広い層を対象にしている割には、説明している方々の説明不足に感じました。

例えば、マクロ一つとってもマクロって何?と思う方も少なからずいると思うのですが、そういった言葉に対する説明が一切ないまま、田中氏、藤巻氏、途中から参加した東京舞台照明の岡山氏の雑談的な感じで進んでいった印象でした。
せめて、詳しくない聴取者の立場に立って聴ける聞き役を付けてほしかったのと、わかりやすく要点をまとめた上で機材に関する資料が欲しかったです。

明かりの作り方の実演

このコーナーを一番楽しみにしていました。
このコーナーでは、LED機材、ハロゲン機材を同じような仕込みで吊り込んで、それぞれ同じシーンの明かりを作っていく実演です。仕込みは前日での仕込みの解説のときに仕込んでいて、そのあとセミナーが終わってからシュート、そして今日の午前中にだいたいの明かりづくりが終わっている予定だったそうですが、けっこう苦戦したようでハロゲン照明の明かりづくりの途中から始まりました。
服部氏の説明のときには、昨日もそうだったのですがこういう仕込み現場は見たことがあるか、明かりづくりの現場は見たことがあるかは確認した上で説明をしてくれます。
また、ムービングライトに対し普通のスポットライトは一般照明と呼ばれることが多いのですが、最近ではコンベンショナルスポットライトという呼び方を普及させていっているそうです。

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立ち会いをしていても思うのですが、デザイナーの方々というのは本当に明かりを決めていくのが早いなという印象です。今回は時間がなかったからかもしれませんが、ぱぱっと決めていくので、打ち込んでいるオペレーターの方が大変です。
そして、1時間程度で明かりづくりは終了。このあと、実際に役者が入って実演です。役者は女性の3名扮する乙女たち。ドレスのような真っ白いワンピースを着て舞台を動いています。台詞はありません。舞台装置は、白い四角い柱が数本立っています。

タイトルは、「自然への誘い」。5分程度の上演時間で、内容としては鈴の音が鳴り、蝉の声が聞こえたあとに遠くで雷が鳴ったかと思うと急に強い風が吹いて3人の乙女が豹変。風が収まると乙女たちも元に戻ります。やがて夜が更けていき、月の光が燦々と乙女たちに降り注ぐとともに虫の声が聞こえてきます。
しばらくすると、朝の鳥の声が聞こえてきて、さらに眩しい陽の光が差してきます。そして、鈴の音が聞こえてゆっくりと暗転していきます。

こういった流れで、進んでいきます。実際に仕込み図とQシートももらっているので、見ながら明かりを見ることができます。
こういう著名なデザイナーの照明の現場を見ることができるというのは、実際に現場に呼ばれたり劇場管理で立ち会うことがない限り機会がないので、貴重な経験です。

コンベンショナルスポットライトとLEDスポットライトでのそれぞれの上演を見たあと、それぞれのQを再生しながら明かりの違いを見せてもらいました。コンベンショナルとLEDでは特性が違うのでどうしても違いが出てしまうのですが、途中からLEDを活かした明かりづくりに切り替えたそうです。
ただ、時間が足りなくてハロゲンの持つ赤みに対する対処などが詳しく聞けなかったのが残念です。

今後のLED照明の可能性について

このコーナーでは、司会の副島氏、服部氏が聞き手、CATの田中氏、服部氏

インフラ整備について

機材の説明であったとおり、DMX回線はどんどん増えていく傾向なので、これからはDMX回線ではなくイーサネットを整備して欲しいとのこと。イーサネットは、DMX回線は一本につき1系統512chでしか使えませんが、イーサネットはケーブル一本で256系統を制御できるため東京芸術劇場や東京国際フォーラムなど大きな劇場では取り入れ始めています。

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ですが、今後は公共施設なのでも外部業者による持ち込み機材への対応などを考えるとイーサネットに統一し、汎用性のあるノードと光ファイバーを配備していくのが望ましいとのことです。

LEDの特性を活かす

岡山氏によると、LEDはダークブルーが出にくいという特性があるのですが、濃いブルーを出したければフルで点かなければ出るそうです。ゲージを落としていくと、30%くらいで濃くなっていくので、台数を増やして照度を上げていけばいいそうです。

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また、藤巻氏によると、メタハラが光源のムービングライトが登場した時は色温度が高過ぎる、ディマーが汚いなどと言われてきましたが、今はそういうマイナス面を乗り越えて使う側が特性をわかった上で使っているとのこと。
しかし、LEDの場合はコンベンショナルと見た目がほぼ一緒のため、光源だけ変わっただけでどうしても同じ使い方をしようと考えがちになります。

しかし、ムービングライト登場時にあったように特性を把握し仕込み方、明かりの作り方をしていかないといけないということです。実際、服部氏が明かりを作っている際、LEDのほうが肌が綺麗に見えるシーンもあったそうです。
今は舞台照明に関してはマイナス面ばかりが取り沙汰されていますが、メリット・デメリットを把握した上で乗り越えていけばいいのかもしれません。

調光卓について

今後は調光卓にカラーピッカーが必須になってくることでしょう。また、最低限ポリカラーの全色が予め設定されていてボタンで選択した色に合うように設定し、JASCIIのように互換性があって共通データとして使用できるようにしないと、LEDは使いづらいのではないかというのが岡山氏の意見です。
実際、劇場での長期公演ならまだしも、歌もののように時間のない乗り打ちや、公共ホールにありがちな9時から仕込んで10時開演、11時30分に終演、午後はまた違う催事が入っているというような状況が多い以上、手間や時間はなるべく掛けたくはありません。

LED照明設備の導入と照明家との関わり方

ホールや劇場で舞台照明設備がLED化に進んでいくに当たり、予算のことなどを考えると今すぐ総LED化になることはないでしょう。少しづつ変えていくに当たり、どこから変えていけばいいかということを話しあい、どこが変わっても支障がないように、こういう話し合いの場を設けることが日本照明家協会や照明学会を含めて必要なのではないかという岡山氏。
ですが、特に公共ホールの場合は特に議会や本庁で勝手に話が進んでいて、「こう決まりました」「こういうものが入ります」という事後報告になることがあります。また、話し合いの場を設けたいと言ったところで、日本照明家協会や照明学会といった団体があることをどれだけのホールが知っているのかが疑問です。

まずは、日本照明家協会という協会があって、こういったLED化に向けた技術者会議というセミナーがあるということをどうやって伝えていくかが課題ではないでしょうか。
また、メーカーに関してはユーザーが使っている場面の見れる場をもっと提供しないといけないのではないか、我々の目線でどうしたいかというのをメーカー側に協力を仰ぎながら、管理する小屋付きも含めてどうしていくかということが課題ではないかということです。

色に関しても、ユーザーとメーカーが一緒になって作っていかないとLED化は進まないのでないかと岡山氏。
今までもメーカーとユーザーの意思疎通がそれていないなと感じる面がかなりあったので、そこは大切だと思います。

シーリング・フロントサイドなどの幕前の照明について

前日のQAで上がっていたのが、2kW以上のスポットライトの開発についてです。これに関して、このシンポジウムでも取り上げられました。

この点に関して岡山氏の意見がなかなかおもしろいものでした。

発送の転換で、フルカラーのプロファイルスポットで舞台をきっちり均等にタイル状に取れば、色も変えられるし最初から当たりも取ってあるから前明かりに掛ける時間が減るのではないかとこと。きれいにシャープになってきれいにボケてくれるプロファイルスポットライトがあれば、行けるのではないのではとのこと。
きっちりタイル状になっていれば、下手当て上手当てという感じではなく、必要なところを点ければいいということになります。なので、MC当てなど新たに当てを作る必要がなくなります。

それに対し、服部氏。今まではフロントサイド・シーリングに関しては2台ないし3台1色でしたが、今後LEDに転換後は1:1で操作していくことになります。そうなるとやはりプロファイルスポットのほうがいいのではないかとのこと。ただ、岡山氏の意見に対しては10%だけ賛成だそうで、もうちょっと考えたいとのことでした。
くらげは、それもありだと思います。やっぱり、時間のない催事で前明かりに時間かけたくないですから。

LEDの大容量化について

今後、LEDの光量が増えていくのかについてです。岡山氏によると実際に4kWのHMI相当の照度を出すLEDもあるそうなのですが、それが映像照明で必要に迫られて作られたとのこと。海外でも、まだメタハラなどの放電灯は使用されているそうです。
なので、今後は700WクラスはLED化して、1500W以上はメタハラなど併用していくのではないかとのことです。

全世界的には、舞台ではハロゲン電球を残さないといけないという意見が出ているそうです。
ハロゲン電球は、ゲージを落とすと赤みが増えていくというのが特性で、それにあたたかみを感じる人もいます。ただ、LEDがその特性を持たなくてはいけないかというと、LEDはLEDの特性でいいのではないかと服部氏。

その辺も、デザイナーによってはこだわりを持っている人もいるので特性がデザインにどれだけ寄り添っているかを整理しないといけないとのこと。

確かに、昨日のワークショップでもLEDのホリゾントライトでRGBそれぞれのゲージを上げてハロゲンでの色味を再現されるか確認している方がいましたが、そこまでのこだわりがなかったとしても無意識に身に付いてしまっている部分はあります。そこをどうすり合わせていくかだと思います。

セミナーを終えての感想

全体的には、かなり突っ込んだところまで話が聞けて満足な内容でしたが、ちょっとわかりにくいのでもうちょっと噛み砕いて説明してほしいところがありました。
ちょうど今はLEDの過渡期に当たる時期です。この時期にいろいろ覚えておかないと置いて行かれそうです。今まではコンベンショナルスポットライトの知識だけでやってこれましたが、これからはムービングライトの概念も覚えておかないといけないなと切に感じました。

それと実は、イーサネットでDMXを制御できるというのは今回はじめて知ったのです。DMXに関する知識も、まだあいまいなところがあるので勉教する必要があります。
こういったセミナーはぜひ何度も開催して欲しいです。

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