舞台照明家のZoomお話し会。続きです。
前回までのお話:舞台照明家同士でZoomお話し会(前編)
持続化給付金のこと
松本 : 今正直なところ、持続化給付金出ないとたぶん6月ぐらいでキャッシュフロー終わるんですよね。だから出るのが前提じゃないと今何もできない状態。なんか初日はけっこう出たみたいだけど、昨日(5/12)はほとんど出ていないみたいね。
中佐 : 一応2週間経ったら誤差はあるけど、審査が通っていれば振り込まれますって窓口の人は言い切っているみたいですね。
松本 : イライラしないで待つしかないけど、貯蓄の少なさにちょっと焦ってる今日このごろです。
中佐 : 本当に貯蓄していなかったことを反省するしかないですね。
松本 : 私も去年の秋から冬がちょっと忙しかったので、久々に余裕があるかなと思ったらあっという間に吐き出しちゃいました。
あいき : 知り合いがまさかこんなことになるとは思わなくて、けっこう機材買っちゃったらしく、その支払いがけっこう厳しいみたいですね。だから持続給付金、早く給付してもらわないと会社が持たないみたいです。
松本 : たくさん雇っている会社とかやばいですよね。雇用調整助成金は一人だけ雇っていても給付されるというんだけど、給付されたっていうのが1.何パーセントという低い確率らしいです。その割に申請がめちゃくちゃめんどくさいようですね。書類が多くて。
今、照明以外の仕事はしている?
中佐 : 今、生きていくために照明以外の仕事を始めた方はいますか?
伊藤 : もともと、別の仕事していて、ワークショップは普通にやってる。
中佐 : そっちはまだ収入があるんですか?
伊藤 : そもそも俳優が食えないと僕ら仕事なくなっちゃうので、俳優に仕事を作ろうと思って始めたから、そっちはまだ食っていけてる。会社だから大丈夫なんだけど、1年しか持たないからどうしよっかなって思ってる。
中佐 : どこから見切りをつけてパン屋でバイトするかなとか迷って。
あいき : まだ働けるだけいいですよ。私は学校が始まらないと身動きが取れない状態です。
中佐 : 学校は緊急事態宣言が明けたら始まる所ってあるんでしょうね。
あいき : 始まって欲しいですね。うちは少子化の割に子供が1000人以上のマンモス校なので、一人感染者が出ちゃうと爆発的にも感染しちゃうので。仕事始まってもちょっと不安はありつつ、でも仕事もやんないと生活できないし。
松本 : 人と話をしないと滅入ってしまいそうなので、最近は仲間の演出家やなんかと連絡は取るようにして、次に向かうための元気づけをし合うようにはしていますね。
それから、時間がある今のうちに実験をするのはありかなと思っています。今の時期なら実験と言っても許してくれる可能性も高いし、反応ももらえたりするので。この中途半端に動き出さない、本当に何もない間に、「またこういうことが起こってもなんとかなる種」を蒔かないと、もう次に来たら終わりかなって気はしていますね。
中佐 : ここまで来ると、逆に現場が始まることをちょっと怖くなってきていて。もう今まで通りに動けないだろうし。今週末に仕込みに行くことになったんですけど、脚立から落ちる気しかしない。
松本 : それって収録か何か?
中佐 : 収録か、配信って言っていたかな。増員で中身全然わからないので、稽古できているのか全然わからないんですけど。
映像と照明
岩城 : 僕こないだ、配信の仕事しましたよ。5月初めにライブハウスで。そのときは、照明忘れていなかった(笑)画面見ながら作るから慣れなかったけど、思っていたよりめちゃくちゃ違うってほどでもなかったなと。ちょっと気にするところチェックすればできるなと思いましたね。
松本 : 僕、映画の仕事やCMの仕事を何本かやっているんですが、フィルムの時代と比べると今はカメラが良くなってるから、僕らの感覚でモニターを見るってことと、レンズからのハレーションとか気にするところはいくつかあるけど、それ以外は僕らの目で戦えるなっていう気はしています。配信もカメラがよくなっているから、あまり気にしなくてもいけちゃうと思いますね。
中佐 : 今倉庫でちっちゃいミニシアターをつくってiPhoneで撮影してるんですけど、 iPhoneの画面を見ながら明かりを作っているとブルーがぜんぜん出なくて全部白くなっちゃうんですよね。それっていいカメラだとそんなことないのですかね。
野村 : 僕も予定していた公演が映像配信になった時に撮影機材がiPhone×7台だったんですけど、LEDを舞台で使う感覚で点灯するとすぐに潰れちゃうので、すごい大変でした。その場でも色々モニター見ながらやったつもりではいたんですけど、あとから納品された映像を見てもめっちゃ顔潰れているなって思って。地明かりをダウンライトでやっていたからというのもあるかもしれないです。
伊藤 : スマフォだと全体に合わせていって明るくなっちゃうからどうしても顔が飛ぶんだよね。ちゃんとしたカメラで絞りを合わせれば飛ばない。映像の仕事をやってる時にカメラさんと「どのレンジなら行けるか」っていうのを調整しながらやっていたんだけど、色は関係なくて、照度しか関係ない。それがすごくおもしろい。
中佐 : なるほど。生だと感覚でできたことが、カメラのレンズを通すと理論になりそうな感じがする。ちゃんとしたきっと計算方法があるんだろうな。
松本 : iPhoneだけじゃなくて、ちゃんと外部モニターに出してそれを調整できるようなタイプの人がいれば実はそんなには難しくないですね。スマフォの画面はビビッドに映るようになっているから、その映像をもう一度別のモニターに映して出し直さないと厳しいと思いますよ。
中佐 : くらげさん、たまに収録しているじゃないですか。収録する側としてそのときどうているんですか?
くらげ : いやーiPhoneしか使っていないですね。赤みが強くなっちゃうと感じているんですけど、どうしようもないのでそのままですね。
中佐 : 全部赤と白になっちゃうんですよね。黄色とかやばくないですか?
くらげ : そこまで感じたことはないかな。
松本 : 収録のときの光源っていうのは何使っています?
くらげ : 私がiPhone使って収録したときって、照明家協会の全国照明技術者会議のときで、体育館を使った仮設での仕込みでMac AURAとフロントにQuantum Profileを使っていたんですけど、プランナーが肌の赤みがキレイに出るように作っていた状態で赤みが強く感じましたね。どうしようもないのでそのまま出しちゃいました。照明家協会にいい収録機材がないってのもありますけど。
中佐 : ところで照明家協会って今どうなっているんですか?
岩城 : 今は何もできないので活動ができない状態ですね。ぜんぜん会議ができないので。打ち合わせも取材もできない状態なので、協会誌が休刊になります。
松本 : 私も協会員ですけど、本当はフリーランスを代表した立場で取りまとめて、他の業界と一緒に取りまとめられるような活動ができればいいんですけど、そういう感じじゃなさそうですね。
岩城 : そうですね。それができる立場の人が幹部の中にいないので。だってこんなことになるとは思ってもいないから誰も。
今、映演労連( 映画演劇労働組合連合会 )がいい動きをしていますね。照明家協会はフリーと経営者が一緒くたになっているので厳しいのではないでしょうか。ほとんど経営者ばかりなので照明家協会に期待するのは無理じゃないかと思いますね。
松本 : まあ、うすうすは勘付いてはおりましたけど。まあよくわかりました。
最近のSNS界隈のこと
中佐 : 最近、SOSS( @SaveSoss )というところにフォローされたんですけど、ご存じの方います?
あいき : 署名活動やっているところですよね?
中佐 : ぜんぜん拡散されていなくて、署名するかどうか迷っているんですけど。協力者の名前が誰もわかんなくて。
松本 : フォロワー”12”ってすごいね。
中佐 : もうちょっといるだろうって思って。怖くてフォロー返していないです。
松本 : Facebook見ると西の方の人の動きですね。発起人が向こうの人みたいです。
岩城 : あー僕も見たけど署名はしていないですね。
伊藤 : 僕も、今見た限りでは母体がわからないし、名前も出ていないからちょっと。発起人のところにはいろいろ出て入るんだけど。
岩城 : これ僕たちが何を何を求めるのっていうことだよね。最近、ある劇団トップの方が大炎上したことがあったけど、「お金ちょうだい」っていう話だと取り合いになっちゃう。僕らが求めることって「イベント舞台関係を再開してください」ってことだよね。だから「お金ください」という主張に手放しで賛同はできないかな。
中佐 : そんなこと言ったらみんな欲しいに決まっていますよね。
私たちスタッフは何を訴えていくのか
中佐 : 何か訴えるにしても、団体がもうちょっとがんばったほうがいいんじゃないかと思います。下請け側が個別に言うんじゃなくて、団体がちゃんとキャンセル払うために動いてくれたら、もうちょっと停まっている間の経済的なことは何とかなるのかなと思いますね。
別にキャンセル料を払ってほしいって思ってるわけじゃないけど、どこもキャンセル料のことはぜんぜんお話ししてくれないから。
岩城 : ただ、主催者なり劇団も、キャンセル料払うのは自腹切ることになっちゃうじゃないですか。だから、「自腹切れよ」とは言えないかな。だから結論として政府になっちゃうんだよね。
だから、我々の業界に対しても補助金やお金での補填が必要だって言ってる政治家を支持するみたいなことになっちゃうんだよね。自分たちで何か一人一人持って行かんで無理があるから、力のある人で僕たちの考えに近くて支持してくれる人にがんばってもらうしかない。
岩城 : 僕たちはもっと政治的な発言をどんどんしちゃっていいと思います。「自分たちが生活するからこれこれの人を支持します」みたいなこと。
松本 : どうしても演劇の人たちって、一般の人よりも言葉が巧いし強くなってしまう。当たりが強くなるので、受け入れるのにハードルが高くなってしまう。つまり喋れる人って捉えられる。
スタッフはBtoB(企業間取引)という立場で、団体から依頼があってデザインをするので、対お客さん(BtoC)という立場にはならない。その中でもフリーランスは会社ではないし、人と人の間に立っている存在なので、誰にも請求できないし、誰も助けてくれない。そういう立場の人は各業界にいて、お金をもらえなくなっている。
だから各業界で弱い立場や声の小さい下請けの立場に立っている人たちを横に繋げられば、社会性もあるし、「演劇だけ」とならずに済むんじゃないかと思っています。
中佐 : 業種や業界を超えて、フリーランスたちが手を組むということですよね。
松本 : 演劇の人たちは、構成したり書いたり、声を出すことができるし、照明家だって、演出家が映像的にどう要求されているかを、わかるように説明してから形にしていくので翻訳家みたいなものですよね。
そういった接着剤のような感じでつなげていければ、もっと社会的なムーブメントになるのではないかなと考えています。
欧米だったらテクニシャンだけのユニオンとかあるのに、日本にはまともに機能しているユニオンがないから、コツコツやる人がやる人がうまく繋がるといいんですけどね。
岩城 : 誰かに訴えなきゃいけないんですけど、たとえば日本俳優連合は形式的に内閣に訴えているんだけど、それであの人たちが動くとは思えないじゃないですか。
実際に行政を動かす力のある力があって、実際に見込みのある人、それでいて僕たちの考えをわかってくれる人は誰なんだろうってことですよね。僕の考えは山本太郎なんだけど、なかなか合意は難しいと思う。
松本 : そうなんですけど、まだ無理ですよね。
中佐 : そういうときに文化庁に頼るというのはどうなんですか?文化庁のトップの文章を読んだら駄目だなと思ったんですけど。
野村 : 文化庁が意義として設立されてるかっていうところですよね。行政が文化にどう関わっていくべきかと文化庁側が認知しているか。
伊藤 : あと、僕ら労働者なのかアーティストなのかというところにもよるかな。だから労働者かアーティテストかっていう意味でいうと両方の立場の人がいると思う。
中佐 : 労働者の立場だったら別に文化庁じゃなくてもいいっていうことですよね。
伊藤 : 基本的にはどこかのユニオンにフリーランスでまとまって入るのが一番確実だよね。「僕らの業界もそこに入れてください」って。
野村 : その部分も、我々が何を求めるかに直結していると思います。「労働者」だったら休業分の補償とかかもしれないですけど、「文化の保護」という観点だとアーティストとして主張するべきだと思います。
「アーティストであるべきか」、「労働者であるべきか」というより、そもそもなんか畑が違うのかなっていう気はしますね。
松本 : 人の立場によって違いますよね。両方の側面を持ってていいではと思っています。どこかの国のように「文化を守ろう」と言い切ってくれる国もあれば、全くスルーなところもあるので。
岩城 : 文化庁は行政府だから、文化庁の裁量でお金を渡すとか配るとかはできないんですよ。行政は基本的に法律で決められた通りにしか動けない。
基本的にはお金の使いみちを決めるのは国会なんです。だから相手は行政じゃなくて政治家なんですね。だから、各団体は政治家に対して訴えているんです。全照協(全国舞台テレビ照明事業協同組合)のように野党の調査に応じているところもありますね。
さっきのユニオンに入るというのがありましたけど、ユニオン自体はお金を持っていないので、補償などを訴える先はどうしても政治家になりますね。
松本 : だから、経団連みたいないろいろな団体がどこかの政党にくっついているわけですよ。それで今経団連あたりが自民党にくっついているから、お金がそっちに降りてくるという。それと同じことが演劇の方もなればいいんですけど。
政治の話をすること
松本 : 政治的な話をするということのハードルが下がって、みんながもっとそういう話ができればいいんだけど。やっぱりまだタブーになっているところが多いですよね。
岩城 : 照明さん同士がそういう発言をできるようになって、例えば「自分は〇〇党のやり方がいいと思う」「いや、△△党のほうが我々のためになる」とかそういう議論をしていいと思う。支持するしないの話じゃなくて。そのレベルの話ができるのが一番いいと思う。
そこが一番誤解されていると思う。平田オリザ氏が炎上したのは、「文化に予算を出せ」と言ったわけじゃなくて、「予算の出し方として製造業とは違うものにならざるを得ない」と言ったに過ぎないんだけど、みんなそういう風に聞こえなかったよね。だから、「どうしてそういう風に聞こえなかったのか」ということが問題にならないといけないのに、「そんなこと言っていない」と言ったから大炎上してしまった。
確かに言っていないんだけど、みんなが「そう聞いた」と言っている。我々ももっと勉強して政治的な議論ができるといいなと思っています。今、照明さんでそういう話をできる人の割合は1%もいないから、10%位入ればいいと思う。その10%の照明さんたちが政治的な議論をしているのを聞いているみたいになれば、だいぶマシになるんじゃないかな。
松本 : なんか下手をすると喧嘩腰になっちゃうので、「この人はどっち支持だ?」と探っていて、違ったら喋らないみたいになっちゃいますね。じゃなくて、「ここについてはこう思っているんだけどどうなの?」みたいに喋れるようになれば、別にどこの党を支持しているみたいなことでもいいと思う。
演劇についてはどれだけ激論戦わせても翌日になると仕事をしていられるのに、なんで政治だけこんなにダメなんだろうって思いますね。「ここについてどう思う?」って感じでちゃんと話し合えればいいだけだと思う。
松本 : この間、酔っ払ってTwitterで岩城さんに政治のことで絡んじゃったんだけど、あれが一つの転機になった。可逆的というか、意見を聞きながら自分の意見もちゃんと探りながらっていう風に。
今までは「声を出さないのはけしからん」という考えがあったんだけど、「これを言ったら言い過ぎか?」という理性もあるので微妙なところで探っていた。でも今は、「言わない人はなぜ言わないのか。言いたくないのか」というところもちゃんと考えないと、思っています。
伝わらないけど、言いたくない人には言いたくない理由がある。ちょっとずれると嫌な感じになるから言わない、と言うような・・・・。気楽に喋れる範囲が広がって、演劇で脚本の隅々を話し合うような感覚で「選挙行った?」みたいな「今度行くよ」みたいに気軽に言えるようになればいいと思う。
若い演出家に知らないことを細かく説明するように喋ればいいんだけど、それが今までできなかった。それがあの岩城さんとのやり取りで変化して、言葉の選び方がしっくり来たので、あれは感謝しています。
中佐 : すごい喧嘩してるなと思って見ていたんですけど、でも最後に永さんが「とても有意義な時間でした」と送っていたので、「え?そういう世界があるのか」という感じでした。
岩城 : 僕はぜんぜん話が噛み合っていないなと思っていなかったし、最後には通じると思っていたから。そんなに争っているつもりはなかったです。
中佐 : 傍から見るとヒヤヒヤしていました(笑)演劇論とか、どういう風にしたら良くなるかとかっていう話っていうのは、正解がないことだったりするじゃないですか。何を言っても自由だし、そう思ってるんだねっていう風な。
政治の話に関しては正解があるような気がして。それは自分の知識だったりとか、なんでそういう風に思うのかっていう。演劇よりは組み立てられていなくて、「選挙カー使わないっていうからこの人がいい」レベルですよ。
なんか全然知識もないし、確固たる根拠があってこの人がいいって言ってるわけじゃないと、ちょっとその政治的な話ってねやっぱ入りにくいです。推す人もいなくて、選ばなきゃいけないから選んでるって言う認識がやっぱ強いなっていう感じはすごいありますね。正解を見つけようとしちゃっている感じ。
松本 : 政治も演劇と同じで正解がないんですよ。正解がないって思えると楽になる。「安倍さんのどこが好きなのか」って話と「山本太郎さんのこういうとこが面白くて好き」って言って、「そうなんだ」って話でいいんですよ。正解って政治のほうがもっとないはず。でも、「今どこを支持してんの」って話になっちゃったりするので言いにくいよね。
伊藤 : 政治のことって話したくないんだと思う。生活に直結してるから考えなくちゃいけないし、すごく頭を使わなくちゃいけないし、知らなくちゃいけないことって思っちゃうからそれがすごく嫌なんじゃないかなって思う。
あと何か好きなものだと、ちょっと向こう側にあるものっていうイメージで捉えられるけど、政治は突然目の前に現れる。お金のことだったり。
「どこの政治家に話をするのか」って話にいきなりなるんじゃなくて、「この状態になってるから誰と一緒にどうやって陳情したらいいか」というところから始められればいいんだけど、ゴールの設定をしたくなっちゃう。そうすると喧嘩もするし、失敗もする。
「とりあえず小池晃がなんか小劇場がどうって言ってたからとりあえず話を聞きに行く」とか「山本太郎は元々芸能人だから演劇もやったし話できるんじゃないの?」というような話ができればいいんだけど、こっち側の目的がはっきりしてないから話ができない。温度がどうしても熱くなっちゃうし。
くらげ : 政治を話すことがアレルギーになっていますね。「私には関係ない」って政治の話になったらそっと逃げるみたいな。突っ込まれたくないっていうところでなるべく触れないようにしています。
伊藤 : 高校の公民で習うポリティカルアパシーってやつだね。政治的無関心に大衆が陥るっていうのを公民で習うのね。
中佐 : 三権分立もこの間、岩城さんに教えてもらってやっとわかった。
岩城 : 決まりってあるじゃないですか。「20AにはミニCを使わないといけない」みたいな。そういう決まりを決めるのが政治ですよ。だから僕たちは決まりを守るのは慣れているじゃないですか。
あるいは自分がやっていることが決まりを守っているかどうかを判定するのは慣れているけど、決まりをつくることは慣れていない。新しい決まりが出てきたときにそれはいい決まりなのか悪い決まりなのか考えるのは慣れていない。突き詰めると、決まりをつくるのが政治って言うことなんだよね。
「どの電線にどれくらい電流を流すのかは決まりで決まっています」と言う人は多くいるけど、それは全然政治的じゃない。政治の役割は、「本当は何十何Aまで流していいか」っていうのを実験で検証するとか。わかりやすく照明で例えたけど、世の中のすべての決まりを決めるのが政治なので、実はそんなに難しい話じゃないんですよね。
だから、この業界も、「『こういう事態になったら補填をする』というように決めてください」というのが政治的発言ですよね。でも、その本当に直結するレベルのことを政治家は言っていなくて、その前の段階で止まっている。政治家自身が政治的議論をしていないというのが本当の問題なんだよね。ほとんど正解を言っていないから、中佐さんの言うように選びようがないから政治的な話にならないのは仕方のないことだと思う。
もっと具体的に、「こうなればいいのに」「こういう仕組みになればいいいのにね」って言っているのって実はすごく政治的な話なんですよね。だからこういう路線でいいと思う。こういうZoom会議も実はすごい政治的な会議だと思います。
伊藤 : まず政治家を選ぶ時点で僕らは何かをしている。選ばれた人たちって僕らの代表者だから、相手が自民党でもれいわでも、陳情には行ける。投票しなくても、陳情っていう「こうしてください」というお願いはできる。陳情するにはまず団体がないと厳しい。「照明家の伊藤です」と言っても話は聞いてもらえないので。
だから、陳情するためにはまずなんらかの団体を作って協同していかないといけない。「生活費がギリギリなのでお金をください」いうのであれば、フリーランスというつながりでウーバーイーツの人たちでもいい。日本はロビー活動(政治家に働きかける動き)が一部の人しか行われて来なかったから、どんなつながりの団体でもいいので陳情するということがもっと常態化するといいと思う。もし本当に実行的なことをするんだったら、地方の自治体の議員に言うのが一番いい。
中佐 : より身近だからってことですか?
伊藤 : より責任が大きいから。その人に対する一票の力が大きいから地元に陳情しに行くのが一番いいんだけど、それだけだと話にならないからその人ともう一個上に陳情しに行く。僕の場合は中野区に住んでいるから、まず中野区の議員に陳情に行く。次にその人と都の議員に陳情に行く。そして都の議員から国会に行くわけ。
本当は政治ってそういう構造でできているんだけど、日本はここ40年か50年かぐらいそういうシステムを使わないで小さな政府に走っちゃったから、陳情があまりできなくなっている。
道路とか建物を作る人たちとか、広告業などの業界団体の強いところだけが、個別に近いところで陳情していくっていう流れになっちゃった。
中佐 : 全然知らなかった。そういうシステムがこの世の中にあるって初めて知れたのでとてもいい機会ですね。
リレー仕込みをやってみたい
中佐 : 誰かがプランを書いて、誰かが吊り込みをして、誰かがシュートして、誰かが明かり作りをするっていう全部違う人がやるリレー仕込みというのを、この前(伊藤)馨さんと話してて。
松本 : ぜんぶそれぞれの思惑でやるの?
中佐 : プラン書いた人は図面あって、図面もらった人が何の打ち合わせもなく仕込んで、シュートして明かりをつくる。
伊藤 : 出来上がりはどうなるかなって。
中佐 : もうちょっと外に出られるようになったら、劇場に代わる代わる行って遊んでみたいな。
伊藤 : 照明のソーシャルディスタンス。
松本 : おもしろそう。
中佐 : シュート取る人は絶対に、「これ誰仕込んだんだよ。コードパツンパツンじゃねーかよ」って絶対言わなきゃいけないってルールがあって。
岩城 : 作品がなくて照明だけやるってことね。
伊藤 : もしかしたらオブジェくらいはあるかもしれないけど。
中佐 : 人はいないですね。
伊藤 : 一人仕込みが一番キツイね。誰もいなくて仕込んでるのが一番キツい。
松本 : 煽られなければ一人でもいいんですけど。
中佐 : 逆に終わらなそうじゃないですか。
松本 : なんかよくわからないことにこだわりそう。昔、タイニイアリスとか泊まれたじゃないですか。夜中勝手にやっていいよってとこ。
伊藤 : 徹夜仕込みって終わらないんだよね。しかも一人でやっていると。なぜこの時間に悩むみたいな。
中佐 : ちゃんと昼間にやって夜は寝たほうがいい。
伊藤 : 2時すぎるとぜんぜん頭が働かなくなるんだよね。でも展示の仕事は2時が佳境だったな。5時までが勝負だから。日が昇ってくるとシュートできなくなっちゃう。
どこが早く再開する?
中佐 : 展示系とかは早めに復活したりするかもしれないですね。客が流動的で間隔を空ければいけるんじゃないでしょうかね。
松本 : アートの展示だったら早々に復活しそうな気がしますね。
あいき : 美術館は早々に何か対応するみたいな話が出てましたけど、どうなんでしょうね。
中佐 : 開けられるから開けたけど客が来ない、開いたがゆえに補助金を受けられないからけっきょくやばいんじゃないかってことが、美術関係者のnoteに書いていましたね。
伊藤 : 中佐さんのインスタレーションはしばらくできないの?
中佐 : 6月はとりあえず中止にしました。8月はやっちゃおうかなって思ってる。本当に小規模な四畳半のところで、出演者はいなくて明かりと音だけで見せるってインスタレーションなんですけど、人数制限するほどでもないくらい。そんなにバンバン客さんが来るもんでもないんで。
8月は、まだ演劇が復活してなくても試しにやってみようかなって思ってますね。なんかすごい叩かれてたら笑ってください。
岩城 : 応援しますよ。会場側がオッケーだったらでやればいいんじゃないですか?
中佐 : 6月も会場はやっていいよって言ってくれたんですよ。でも6月の中旬だから、やるって言っておいてギリギリでやめますっていうのもあれだし。
野村 : 知り合いが5月に、お客さん一人に対して覆面をつけた俳優が一人野外で上演するっていうやつをやるらしいんです。心配されていたのは、感染のリスクというより、今は演劇に対する世間の風当たりが強いので、自粛警察の人から本番中にテロまがいの行為がないかっていうことは話されてましたね。
平原演劇祭(@@heigenfes)っていうんですけど。
中佐 : これ、場所は行く人しか教えてくれないってことですよね。
野村 : そうですね。
中佐 : 音楽が禁止になったヨーロッパでバーに自動演奏のオルゴールが流行ったときみたいに、闇演劇みたいなのが流行るのかな。どこでやっているかもわからなくて、口コミだけで潜っていく。一見やってなさそうなんだけど、地下で行くと演劇がやってる。
伊藤 : ロシアでは抽選で一人だけ見られるクラシックコンサートをやってるみたいだね。
自粛警察がヤバい
岩城 : 自粛警察ってヤバイっていうか、なんか戦うべきじゃない人たち同士が戦ってるよね。
伊藤 : 東日本大震災のときも出たけど、よりひどいよね今の自粛警察。
松本 : 関東大震災の時にあったときみたいなことが起きてる。ただ他の都道府県のナンバーの車だからってミラー割られたり。うち引っ越して住んでいるところとナンバー違うからちょっと気持ち悪い。
中佐 : 高円寺に「いちよん」さんっていう居酒屋があるんですけど、自粛警察にビラを貼られたみたいです。ここは今無料で演劇を配信しているところで、自粛警察に狙われたみたいですね。今度空間企画でインタビューするのでnote見てください。
松本 : ああいうの、犯罪だからね。また警察やなんかも真面目に取り締まらないからね。
中佐 : 20時なのでここで一度〆ようと思います。ありがとうございました。
締めくくり
今回、Twitterやふだん現場では話をしないようなリアルな話が聞けておもしろかったです。
もっと別のジャンルの照明さんとも話をしてみたいですね。